リンパ系の構造・機能およびリンパ管新生に関する研究


研究概要
1.微小脈管(リンパ管・毛細血管)の臓器内分布と新生に関する免疫組織化学的研究
リンパ系は,リンパ管・リンパ節・胸腺などからなる複合システムで,リンパ循環を介して組織液の血液中への回収にあずかり,また免疫系においても重要な役割を担っている.本研究の遂行に必要不可欠な,臓器内にあるリンパ管内皮細胞の増殖・分化の免疫組織化学的観察,および病理標本の網羅的検討を行っている.
2.種々の影響因子によるリンパ管内皮細胞の性状および細胞動態の解析
リンパ管の細胞生物学的性状を明らかにするために,細胞増殖因子・接着因子・化学因子に対するIn vitroでの細胞の動態変化を評価・解析している.さらに,最近では,超分子複合体の優れたアロステリック効果と抗癌メカニズム,および関節炎に対する抗腫瘍壊死因子療法の効果についての研究にも携わっている.
3.リンパ系における特異的機能分子の発現と悪性腫瘍の転移機構などの解析
疾患動物モデル(悪性腫瘍,炎症,糖尿病,創傷治癒,リンパ浮腫)における微小循環系の構築とリンパ管新生・再生の機序に関する分子生物学的解析を行い,特に腫瘍とリンパ行性転移との関連性を明らかにしようと試みている.
4.筋萎縮および筋損傷の回復過程におけるリンパ管系の役割とそのメカニズムの解明
リンパ管系は,骨格筋の萎縮・損傷・再生過程においても重要な役割を担っていると考えられている.最近では,四肢の骨格筋疾患におけるリンパ管新生の関わりが注目されつつある.本研究プロジェクトでは,早期リハビリによる筋萎縮・損傷の回復促進過程でのリンパ管系の応答,およびそれらの病態を制御する内皮細胞のシグナル伝達機構の解明に取り組んでいる.
アピールポイント(技術・特許・ノウハウ等)
・ リンパ系疾患に関わる実験動物モデル(悪性腫瘍,リンパ浮腫)を用いた,リンパ管内皮細胞の変化とその分子機構の検証技術 (癌のリンパ行性転移の抑制やリンパ浮腫の予防に貢献).
・ リンパ免疫系疾患に関わる内皮細胞のシグナル伝達機構の発見(新たな分子標的治療の開発に貢献).
・ リンパ管系の形態・機能応答が及ぼす影響およびそのメカニズムの解析(早期リハビリによる筋損傷の治癒過程及び筋萎縮の回復過程の解明).
応用可能な分野
・ リンパ学研究: リンパ系に関連する病態および疾患の解明
・ センチネルリンパ節の微小環境変化やリンパ管内皮細胞の特性変化に関する研究: がんの早期発見・早期治療への基礎資料の提供
・ リンパ浮腫の術後発症を予防するための指導やリンパドレナージ(マッサージ効果)などの評価,およびリハビリテーション医療の開発
・ 筋病態におけるリンパ管系の包括的な役割の解明: 運動療法などの回復効果を科学的に検証,治療法の開発に発展