免疫不全患者におけるウイルス性脳炎の解明と克服

研究概要
1. 同種造血幹細胞移植後ヒトヘルペスウイルス6脳炎の解明と克服を目指す研究
同種造血幹細胞移植は難治性血液疾患の治癒を目指す治療法として広く行われている。私たちは移植後に記憶障害で発症し、辺縁系(海馬)脳炎をきたす予後不良の症候群を示し、これがHHV-6による脳炎であり、臍帯血移植後には10%弱の患者に発症することを明らかとした。全国調査で有効な治療法を確認するとともにその保険適応取得に貢献し、さらに世界に先行して治療ガイドラインを作成した。現在さらに病態を明らかとする研究、および発症予防に向けた取り組みを行なっている。
2. 免疫不全患者におけるウイルス性脳炎に関する研究
我々は同種造血幹細胞移植後の脳炎の主因はHHV-6であることを明らかとしたが、一方で脳合併症の原因の約半数の原因は現在も不明である。移植以外においても免疫不全患者における脳炎は原因が不明なまま不良な転帰をとることが多い。私たちは次世代シークエンスを用いて病原体を網羅的に調べることにより、既存の方法では診断にいたらなかったウイルス感染を明らかとする研究に取り組んでいる。さらにゲノム情報を用いて薬剤耐性や病原性と関連する変異を評価する。
アピールポイント(技術・特許・ノウハウ等)
•ヒトヘルペスウイルス6型のタイプA及び/又はタイプBを検出するためのプローブ 発明者: 河野利恵、白尾国昭、緒方正男 特許第682888号
•2020年度 日本造血・免疫療法学会 学会賞受賞
•造血細胞移植ガイドライン: HHV-6 (日本造血・免疫細胞療法学会)筆頭として作成
•免疫不全患者における中枢神経系感染症に関し、国内の研究を牽引
応用可能な分野
迅速、網羅的な感染症診断、原因不明な臨床病態における感染症の関与の解明、PCRに変わる次世代感染症診断法の確立