1.染色体転座・融合遺伝子による肉腫発がんメカニズムの解明、
2.肉腫に対する標準治療開発のための多施設共同臨床試験

研究概要
1.悪性骨軟部腫瘍(肉腫)の多くにおいて、疾患特異的染色体転座とその結果生じる融合遺伝子が発がん原因と考えられている。融合遺伝子形成による発がんは造血器腫瘍や様々な臓器のがんでも認められる普遍的なものであり、我々はその分子機構の詳細の解明を目指している。これまでに、ユーイング肉腫において、染色体転座t(11:22)の結果生じるEWSR1-Fli1融合遺伝子産物により、細胞周期のG1期チェックポイント機構が破綻することが発がん原因の一つであり、それに関わる因子が分子標的治療のターゲットになり得ることを見出した。また、非翻訳短鎖RNAであるmicroRNAのいくつかが肉腫の増殖や転移に関わっており、新たな治療標的となる可能性があることも明らかにした。さらに、そもそも染色体転座と融合遺伝子がなぜ発生するのか、DNA二本鎖切断修復機構の異常と肉腫発がんの根本的メカニズムについても研究している。
2.全国の専門施設が参加する日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)骨軟部腫瘍グループおよび日本ユーイング肉腫研究グループ(JESS)において多施設共同臨床試験を実施し、肉腫に対する新たな標準治療の確立とさらなる治療成績の向上を図っている。また、臨床試験や日常診療で得られた肉腫検体を用いて遺伝子発現解析やゲノム解析などを行うことで、肉腫の診断や治療に有用な新たなバイオマーカーの開発を行っている。さらにEORTCなど海外の臨床研究グループとの国際共同研究にも積極的に取り組んでいる。
アピールポイント(技術・特許・ノウハウ等)
培養細胞・動物モデルによる肉腫発がん機構の分子生物学的解析・分子標的治療の開発
JCOG骨軟部腫瘍グループ・JESSによる多施設共同臨床試験
臨床検体を用いたゲノム解析による新規バイオマーカー探索研究
応用可能な分野
新規治療薬の開発を目指したバイオマーカー探索
希少がんの治療開発