高血圧における原発性アルドステロン症の効率的診断法の確立

研究概要
高血圧は、国民の3人に1人に認め、動脈硬化から心筋梗塞、脳卒中、慢性腎臓病などの心血管病 を起こす主な原因である。90%は原因が特定されない本態性高血圧であり生涯の治療が必要となるが、 約 10%は原因が特定される二次性高血圧で、原発性アルドステロン症(PA)はその中の主要な疾患である。 PA は早期診断と治療により、外科治療による治癒または特効薬による著明な改善が期待され、診療ガイ ドラインが作成されたが、未だ本態性高血圧として治療されている患者が多い。
PA の診断は、外来でのアルドステロンとレニンの血液検査によりスクリーニングが可能であるが、そ の後の根治手術の適応を調べるには副腎静脈サンプリング(AVS)などの入院検査が必要となる。本研究 は、根治手術の適応の有無を外来検査で行う前向き研究であり、PA の効率的診断を行い、患者の入院検 査の負担を軽減して医療経済的なメリットを実証することを目的とする。
AMED による多施設共同研究(Japan Primary Aldosteronism Study:JPAS)により、生理食塩水負 荷試験(SIT)は PA の確定診断に加えて、内科的治療の対象となる両側性 PA と診断できるカットオ フ値を明らかにできた(負荷後アルドステロン値<120pg/mL)。本研究では、入院後に SIT を含む 機能確認検査と AVS を行い、両側性 PA と判定できるアルドステロン値を前向き研究で検証して、 最小限の検査により、医療経済面および患者負担面から最大限有用な PA の効率的診断法の確立を 目指す。
アピールポイント(技術・特許・ノウハウ等)
PA 診療ガイドラインについて、日本内分泌学会(PA コンセンサス・ステートメント副委員長)およ び米国内分泌学会のメンバーとして、PA 診療のオピニオンリーダーとして活動しており、高血圧治療ガ イドライン 2019 の執筆者を務めている。
また、当院は活性型レニン濃度とアルドステロン濃度の迅速測定系が 2017 年に導入され、外来待ち 時間に結果がわかる診療体制が確立できている。
応用可能な分野
高血圧全体の約 10%を占める二次性高血圧の診断の中で、PA 診断についての検証が本研究の目的であ るが、PA を的確に除外診断することで、その他の二次性高血圧として頻度が高い睡眠時無呼吸症候群、 腎血管性高血圧、クッシング症候群、褐色細胞腫などの診断に迅速に移行することが可能となる。
また、レニン、アルドステロン値の血液検査により、PA の診断に加えて、的確な降圧薬の選択やミネ ラルコルチコイド受容体拮抗薬の用量調整など高血圧治療へも応用可能である。