1.口腔がん早期発見のための診断ツールの開発 2.口腔がん細胞の浸潤転移機序に関する病理学的ならびに細胞生物学的研究

研究概要
1.口腔がん早期発見のための診断ツールの開発
1)早期口腔がんと前がん病変の早期診断
口腔がんの治療成績向上には進行症例に対する有効な治療法開発と早期症例、前がん病変の早期発見・治療が欠かせない。われわれは早期発見にための方策として、大分県での口腔がん集団検診と個別検診体制確立のための一般歯科医師対象のセミナーを行っている。現在、早期口腔がんの診断は視診、細胞診などの非侵襲的手法で行っているが、これらの手法には主観的要素が大きいため、正確な診断には十分な経験が必要である。そこで口腔がんに対するある程度の知識があれば、高い正診率の得られる診断ツールの開発を目指している。具体的には、唾液や血液中の口腔がん由来の微量分子から早期診断に有用なものを選別し、当科の口腔がん患者を対象に臨床研究を計画している。
2)潜在性リンパ節転移の早期発見
口腔がんの所属リンパ節転移の発見の遅れは治療成績を下げる要因である。当科では超音波検査による診断体制を確立しており、臨床所見やCTにより診断困難な初期の転移(潜在性転移)の早期診断を行い、高い転移巣制御成績を得ている。しかし現状の超音波検査ではわずかではあるが、偽陰性症例(見落とし)がある。正診率をさらに上げるため、超音波検査の感度を上げる工夫を行っている。
2.口腔がん細胞の浸潤・転移機序に関する研究
口腔癌の予後を決定する最も大きな因子は,原発巣の大きさと頚部リンパ節転移の有無である。そこで,癌細胞の浸潤能と頚部リンパ節転移能がどのような分子によりコントロールされているかを明らかにし,癌の分子生物学的性格に基づくリンパ節転移の早期診断と早期治療,さらに浸潤・転移を抑制する新たな治療戦略の確立を目指している。
アピールポイント(技術・特許・ノウハウ等)
1.口腔がん、口腔前がん病変の診断と治療
見落とされることの多い早期口腔がん、口腔前がん病変の早期診断に力をいれており、2008年から大分県内で口腔がん診断検診を実施してきた。この臨床経験を生かして、2018年度中にカトマンズ大学医学部歯科口腔外科と連携し、カトマンズで口腔がん検診を開始する予定である。
また前項1 2)で述べたように、転移リンパ節の超音波検査に精通しており、正診率向上のための機器改良に積極的である。
2.口腔疾患の病理組織学的研究
病理組織学的観察は疾患の診断や治療に関する研究テーマを見出す第一歩である。私は口腔疾患の臨床に携わりながら、病理組織学の知識を活用して病理組織を自ら検鏡して、治療法の選択、治療効果の判定を行っている。
3.in vitroアッセイによる培養がん細胞の運動・浸潤能の解析
培養口腔がん細胞の生物学的特徴を評価するin vitroアッセイ手技を習得している。その一つとして、がん細胞の分散能を評価するScatter assayは、自らの研究過程で開発した方法である(Exp Cell Res 262:180, 2001)。
応用可能な分野
1.非侵襲的手法による口腔がん早期診断法の開発
2.カトマンズにおける口腔がん検診の共同運営
3.口腔がん所属リンパ節転移の早期診断ための超音波検査機器の改良
4.口腔がんの浸潤・転移を抑制する薬剤の探索