腸内環境からみた肥満に伴う合併症予防の治療戦略


研究概要
1.メタボリックシンドロームに伴う全身性炎症病変と脾臓との関連
肥満により、脾臓由来の抗炎症作用を有するIL-10の合成能が低下し、その低下が脳、肝臓、
内臓脂肪、腎臓および膵臓に炎症性病変および糖脂質代謝異常や高血圧といったメタボリックシンドロームとよく似た病態をもたらす。したがって、メタボリックシンドロームに伴う全身性炎症性変化には、脾臓IL-10合成能の低下が関与することを解明している。
2.インクレチンのグルカゴン分泌抑制作用及び膵島保護作用における、肝臓、脳、膵臓の臓器連関の解明
インクレチンであるGLP-1は、肝臓内に存在するGLP-1受容体を介して、肝臓からの求心性神経を活性化させ、脳内BNNF神経を刺激させる。さらに、そこから膵臓への遠心性神経が刺激され、神経終末末端からBDNFが放出し、そのBDNFが膵臓α細胞に惣菜するBDNF受容体を介して、α細胞からのグルカゴン分泌を抑制される。また、上記のような機序を介して、GLP-1は膵島保護作用をもたらすこと明らかにしている。
3.肥満を合併した認知症に対する腸内環境の重要性
インクレチンであるGLP-1は小腸から合成されるが、肥満になるとGLP-1合成能が低下する。また、上記のようにGLP-1によって発現が高まるBDNFは脳細胞保護効果を有するが、認知症患者ではそのBDNF発現が低下することが知られている。肥満は認知症の危険因子であることを考慮すると、肥満に伴うGLP-1の低下が認知症発症に関与していることが推測される。このGLP-1低下の要因として、腸内環境に注目している。実際、肥満モデル動物にヨーグルトパウダー、大豆イソフラボン、コーヒー及び鶏肉に多く含まれるカルノシンを投与すると、腸内環境が改善し脳内BDNF発現が促進されることを明らかにしている。
アピールポイント(技術・特許・ノウハウ等)
肥満を伴った認知症予防として、(株)明治イノベーションセンターと共同研研究を行っている。
応用可能な分野
内科学のみならず、食品科学の分野で応用可能である。