糖尿病性腎症・肥満関連腎症における尿中ポドサイトmRNA排泄量のバイオマーカーとしての有用性の検討


研究概要
糖尿病を含めた生活習慣病患者の数は増え続けており、患者の生活の質(QOL)維持や医療経済上も深刻な問題となっている。新規透析導入患者のみならず、累積血液透析患者数でも第1位である糖尿病性腎症をコントロールすることは透析導入患者を減らす上で喫緊の課題であり、そのためにも、糖尿病性腎症を早期発見することは極めて重要である。また、肥満は糖尿病発症の危険因子となるだけではなく、糖尿病を除外しても蛋白尿や慢性腎臓病発症に対する有意な危険因子であることが報告されている。現在、糖尿病性腎症の早期診断法として日常診療で用いられている微量アルブミン尿は、結果が陰性であっても、糸球体傷害が進行している症例が存在することが知られている。また、肥満患者においても早期には検尿異常を認めない症例も多く、微量アルブミン尿や蛋白尿より精度の高い早期診断法の開発が求められている。
多くの糸球体疾患は、糸球体硬化の進行の結果として末期腎不全に至ると考えられているが、近年では、様々な原因によって引き起こされるポドサイト障害の持続に伴うポドサイトの脱落が糸球体硬化の主因と考えられてきている(右図)。我々は、これまでに動物モデルや臨床症例を用いて尿中ポドサイトmRNA排泄量が糸球体疾患のバイオマーカーとして有用であることを報告した(Fukuda A et al. Kidney Int 2012, Nephrol Dial Transplant 2015, 2017)。肥満や糖尿病においては比較的早期から糸球体肥大及びポドサイト傷害を認めていることが報告されており、同マーカーの有用性が示唆される。我々は尿中ポドサイトmRNA排泄量が糖尿病や肥満において、アルブミン尿・蛋白尿より早期のマーカーとして有用であり、また腎予後予測因子となりうることを動物モデルおよび臨床症例で報告した(Fukuda A et al. Sci Rep 2019, 2020)。最終的には糖尿病性腎症による透析導入患者をゼロすることを目標としており、より多くの症例、長期followを行い有用性の検証を行いたいと考えている。
アピールポイント(技術・特許・ノウハウ等)
非侵襲的な尿サンプルを用いて糖尿病性腎症・肥満関連腎症に有用な新規バイオマーカーを探索する。
応用可能な分野
腎臓疾患全般