実半単純リー群の等質多様体
研究概要
連結実半単純リー群Gの等質擬ケーラー多様体Mに関する研究を推進している.
連結実半単純リー群Gに対して,Gの等質擬ケーラー多様体Mは楕円(型随伴)軌道として実現され,逆に,楕円軌道G/LはGの等質擬ケーラー多様体になる(ただし,ここではケーラー多様体を一つの擬ケーラー多様体だと考えている).従って,(例えば)群Gの中心が自明であるという仮定のもとで,M=G/Lはある複素旗多様体Gc/Q-内の単連結な領域DとG-同変実解析的同型になる,
ι:M=G/L → Gc/Q-,gL→gQ-.
上記ιによってM=G/LをGc/Q-内の領域とみなし,G/Lを(Gの等質)複素多様体だと考える.そして,有限次元複素線形空間Vと正則準同型写像ρ:Q- → GL(V)から複素旗多様体Gc/Q-上の等質正則ベクトル束Gc×ρVを定め,その束をG/Lへ制限することによって等質擬ケーラー多様体G/L上の正則ベクトル束ι♯(Gc×ρV)を得る.
ι♯(Gc×ρV) Gc×ρV
↓ ι ↓
G/L → Gc/Q-
このとき,束ι♯(Gc×ρV)の正則断面全体がなす複素線形空間Wにおいて,連結実半単純リー群Gの連続表現と複素半単純リー代数Lie(Gc)の線形表現が自然に定義される,
G×W∋(g,ψ)→χ(g)ψ∈W, Lie(Gc)∋A→A*∈End(W).
ここでWの位相は半ノルムの可算族によって定まる局所凸位相である.
連結実半単純リー群の等質擬ケーラー多様体Mの典型例として,複素射影空間CPn,複素グラスマン多様体Mn,k(C),コンパクト型エルミート対称空間Gu/K,複素数平面内の開単位円盤D1や上半平面H1,複素ユークリッド空間内の対称有界領域Dなどが挙げられる.また,複素線形空間Wの例としては,M上の正則関数全体がなす複素線形空間O(M)や,M上の正則ベクトル場全体がなす複素線形空間Γ(T1,0M)などが挙げられる.連結実半単純リー群Gの連続表現や複素半単純リー代数Lie(Gc)の線形表現などを活用しつつ,複素線形空間(=関数空間)Wの研究を推進している.
アピールポイント(技術・特許・ノウハウ等)
1. 複素半単純リー代数のルート系理論
2. 実半単純リー群の等質擬ケーラー多様体に関する研究
応用可能な分野
数学(微分幾何学)