1.上気道粘膜免疫機構の解析と中耳炎予防ワクチンの開発 2.IgA腎症に対する口蓋扁桃摘出術(扁摘)の手術適応判定基準の確立


研究概要
1.上気道粘膜免疫機構の解析と中耳炎予防ワクチンの開発
病原微生物の侵入に絶えず曝されている上気道粘膜には発達した免疫システムが存在している。抗原の経鼻投与は上気道に効率的に抗原特異的免疫応答を誘導することが可能であり、経鼻ワクチンの有用性が示唆されている。中耳炎をはじめとする上気道感染症予防のためのワクチン開発を目的とし、上気道粘膜免疫機構の解析を分子レベル、細胞レベルにて行なっている。
2.IgA腎症に対する口蓋扁桃摘出術(扁摘)の手術適応判定基準の確立
IgA腎症は病巣性扁桃炎の代表的な疾患であり、扁摘による治療効果が明らかとなってきており、積極的に扁摘が行なわれるようになってきた。しかし扁摘の効果を予測した術前診断は現在のところ困難であり、すべての症例に対して扁摘が効果的であるわけではない。すなわち全症例において扁桃がIgA腎症に関係しているわけではない。またIgA腎症の治療法としての扁摘の認識度は未だ高いとはいえない。したがって病巣扁桃の免疫応答を明らかにしていき、病巣扁桃の正確な術前診断、扁摘の手術適応判定基準の確立を目指している。また同時に医療従事者をはじめとしてIgA腎症に対する扁摘についての啓蒙を行なっている。
アピールポイント(技術・特許・ノウハウ等)
1.上気道粘膜免疫機構の解析と中耳炎予防ワクチンの開発
ワクチン開発による公衆衛生上の貢献は大きく、他の病原体、疾患への応用も可能である。経済的にもワクチン製造において利益が見込める。経鼻ワクチンは点鼻または噴霧となるが、その至適化は他の薬剤にも応用可能である。疫学的に中耳炎と集団保育の関連が問題となっているが、専門的立場から育児施設へのアドバイスが可能である。人工栄養は母乳栄養との比較から、中耳炎のリスクファクターであるが、人工栄養(粉ミルク)にワクチン成分を含ませることも可能である。ワクチンの供与はもとより中耳炎モデル動物や上気道粘膜免疫についての研究テクニックの供与も可能である。
2.IgA腎症に対する口蓋扁桃摘出術(扁摘)の手術適応判定基準の確立
手術適応判定基準の確立による日常診療上の貢献は大きく、医師側、患者側双方にとって大きなメリットとなる。術前診断(検査)の際に使用される最適な生検機器(鉗子)の開発は他の機器への応用も可能である。解析作業の簡略化、キット化により迅速簡便な診断が可能であり、多施設での診断も可能である。またキット開発において利益が見込める。