コンピュータの高信頼化とその応用


研究概要
大規模集積回路(LSI)はコンピュータの主要な構成要素として,インフラシステムからパーソナルシステム,IoT機器まで広く用いられており,社会や人々の生活の安全・安心・安定を実現する上で,その高信頼化が不可欠です.これらを考慮した設計とテストおよびその自動化と,それを用いるアプリケーションに関する研究を行っています.
1. テストパターン生成(ATPG)技術:微小遅延故障など,LSI微細化で生じる故障モードに対応した高品質なテストパターンを生成する技術を研究開発しています.
2. テスト容易化設計(DFT)技術:高品質なテストを行うためには,論理設計段階からテストを考慮した設計を行う必要があります.論理レベル,レジスタ転送レベル,動作レベルなど,様々な設計抽象度でのテスト容易化設計技術を研究開発しています.
3. 組込み自己テスト(BIST)技術:システム・オン・チップでは,外部から内部信号へのアクセスが難しく,テスト機能を内部に組み込んでテストを行うBIST技術が不可欠になっています.微小遅延故障などに対応した高品質なBISTを行うための技術を研究開発しています.
4. フィールド高信頼化技術:長期間にわたって使用されるLSIは,劣化により故障が生じます.そのため,出荷前のテストだけでは不十分で,使用中も定期的にテストが行われます.本研究では,もうすぐ故障になるものを予測する劣化検知技術を研究開発しています.
5. 不良品予測:バーインはLSI製造においてコストのかかる工程です.蓄積された過去の製造データから,バーインテスト結果を予測し,バーイン時間を削減する技術を研究開発しています.
6. IoTシステムの実装:IoTシステムでは,IoTデバイスは広範囲に設置され,その後長期間使用されます.そういったデバイスに故障が生じると,保守には多大なコストがかかります.本研究では実際にIoTシステムを構築し,実環境でのデータ収集を行い,フィールド高信頼化を目指しています.現在,様々な産業への応用を行っています.
アピールポイント(技術・特許・ノウハウ等)
LSI設計・製造に関して,テスト生成アルゴリズム,テスト容易化設計アルゴリズムなど,設計自動化に関する技術を中心として,論理設計,テスト設計技術を有します.また,低消費電力・高信頼向けの非同期式回路のテスト技術,フィールドテストに関する特許を有します.データマイニング技術,AI技術を活用した不良品予測とその精度向上に取り組んでおり,統計処理,機械学習,深層学習等に関する技術も有します.IoTシステム,センサの設計,試作を行っており,ハードウェア/ソフトウェア全体の設計技術,ネットワークを介したデータ収集等のノウハウを有します.
応用可能な分野
LSI製造分野,特に論理設計,テスト設計に応用可能な技術です.今後電子機器を製造する上で対応することが不可欠なIEC61508,ISO26262等,電子機器や自動車用半導体の国際標準への対応にも応用可能です.LSIの不良品予測については,広く情報科学を用いており,様々な製造分野への展開が可能な技術です.IoTシステムは実環境での実証実験を行っており,3G/4G通信網の利用,防水や食品への対応も行っています.各種製造における温度,湿度,振動等の情報収集はもちろん,農業における植物,動物とそれを取り巻く環境のモニタリング,データ解析にも対応できます.